どうということもない

どうということもないけど 忘れたくない

私だけの人生、私だけのハンドル


人生のハンドルは一本しかない。それを握るか握らせるかは自分の管理能力が決める。


最近は以前に増して鬱屈している。寒いからかもしれない、社会人になって半年経った。


半期目標を決める時期になった。主体性が足りないと言われる。それは私自身の覚悟の無さから来るものだと思う。このままでいいのか。


間違いなくやりたい仕事で、最高の場所、環境が揃っている。だけど何かがすごくモヤモヤしている。理系科目が得意じゃないのに薬学部を第一志望にさせられていた高一のあの頃を思い出す。


最近ではストレス発散にしていたはずの文字すらもあまり書けなくなった。

(実はここではないどこかでひっそりと小説を書いたりしているけれど、それは私ではない誰かの所業となっているのでここでは文字を書いたことに数えない。)


人事から視線を集めやすい新卒こそが頑張り時だと、言われてきた以上に自分の中で反芻もしていた。


新卒の同期はみんなズンズンと前に進む。同期たちの受賞の文字を幾列も見てきた。輝かしげな笑顔、先輩からの熱い視線。彼らは正しくスポットライトを浴びて、向上心を持ち、悠然と前を見つめている。

私がコントロールZからオプションコマンドescまでを覚える間の話だ。


すごく悔しくて嫉妬して、羨ましくて仕方ないところがありながら、例えば放送研究会で賞をもらえなかった時や、例えば早慶模試がD判定だった時の悔しさとはまた違うものがある。


唇を噛み血を流し、鼻の脂と涙をシーツに擦り付けるあの感覚とはまた違う。

自分への嘲笑が止まらない。自身の愚かさだけがありありと残っている。

逃げているのだとも思う。


私は違うぞ、そこがフィールドじゃあないんだ、もっとほかに力を出せる場所があるんだと、阿呆らしく自分で自分を納得させようとしてるのかもしれない。


これは一番良くない状態だ。大体このフェーズに入って何かか上手くいった試しが一つもない。人生の停滞、血の流れがどんどん硬化していって脈瘤で堰き止められているようなイメージ。


最初にこの感覚を覚えたのは中学受験。


周りの期待のままに学大附属、青学附属を受けて見事滑りに滑った。自分で決めたわけじゃあない、私はここで結果出せなくたって、とここ1番の勝負で諦めたのだ。

合格発表の掲示板の真ん前。私の隣で親が泣き崩れ、しゃがみ込んだのがなんとなく気持ち悪くて仕方なくて、帰りの電車で緑色したキシリトールのガムを噛んだ。


次は高一の時、親から熾烈に医学部・薬学部に行けと言われ、オープンキャンパスに出向き、高2からの文理クラス分けの希望を理系で提出した時だ。


まるで砂を噛むような気持ちで理系、と書いたことをよく覚えている。英語や歴史など、文系科目ばかり得意で好きだったはずの私が、まさか理系になんて死んでもいくものかと思っていた。文系理系の話をした時に初めて本気で掴み合いの親子喧嘩をして、数日間口も聞かず目も合わせず、親側が折れてきたのだった。



誰かに人生をハンドルされてるような感覚。しかし、この会社のこの部署でこの人と働くと決めたのは他でもないこの私だ。なのになぜここで過去に感じたあの感覚を思い出してしまうのか。


正直言って甘ったれてるのだと思う。


私は勤勉な同期と違って、家に帰ったらぼーっとアニメを見てゲームをやって、夜中2時に寝る。実家暮らしでそこそこ貯金もしている。前に比べるとギリギリの感覚が少しもない。これは創作意欲を大いに削ぐので恐ろしいことではあるのだが、その話は置いといて、とにかく今甘えられる環境と態度が出来上がりすぎていて、私は逃げている。この逃げてる感じは早慶に入らなければ死ぬ、と決めてから最初の何ヶ月かの感じにも似ている。


高2の私は、甘えられる状況全てを削ぎ取り、勉強のバーサーカーとなっていったのだが、入社して半年が経ったいま、バーサーカーになる必要がある気がしている。そのためにはとにかく自分を追い込む必要があるのだが、どうしたら社会人って追い込めるんだろうと疑問に思っている。一人暮らしでも始めようかと思うけれど、実家と勤務地が近い今わざわざ1人で暮らす理由があまりない。上手く自分をハンドルしていかないと、何か大きなものに自分がハンドルされている感覚は抜けていかない。

神の見えざる手、リヴァイアサンはいつまで私とランデヴーするつもりなのだろうか。


一刻も早くリヴァイアサンのすき身でツナサンドを作って、出勤前の朝ごはんに食べられるくらいの女にならなくては、立派なサラリーマンになる夢を達成できずに終わってしまう。



せっかく乗りかかったこの車は。乗りこなして立派なサラリーマンになってみせよう。

どんなにダサくみっともなく、下手に生きたとしても、この世界で1本しかないハンドルを、誰かに預けるなんてダサいことはしちゃだめだ。さあ踏ん張れ。まだまだ私のサラリーマン人生はこれからだ。


ではまたどこかで。


amane