どうということもない

どうということもないけど 忘れたくない

Iくん



これは私が中学から高校、そして大学まで一緒の、とある男の子を目の敵にしていた話です。



私の学校は中高一貫校で、中学2年から高校3年まで「特進クラス」なるものが存在していました。この制度、もうほんとに嫌いで、なんなんと思っていました。毎年メンバーが入れ替わるので、受験みたいな気分だし。これのせいで、中学1年の頃仲良かった友達や、途中から仲良くなった子達と最後まで同じクラスになれなかった。高校からは学年が4、5、6年という呼び名になるのも、進学校ぶりっ子してて嫌でした。


中学1年の頃は、ガラケーでひたすらHTMLの同人サイトを作りまくっては母に携帯を取り上げられ、返されるとまたHTMLの同人サイトを作りまくるという日々を過ごしていました。4個くらいあった。部活に行ったり友達と遊んだりもしてたけど基本的によく家にいたし、勉強も嫌いでした。だけどやたらと現代文の成績が良くて、クラスでも首位に輝いてました。中学2年生までは。


中学2年から晴れて(?)特進クラスになった私は、「勉強しないと首位になれない地獄」を初めて体験します。特に現代文。宿敵が現れてしまうのです。常に叫んで、遊び回ってて、何も考えてなさそうなのに、私よりずっとずっと現代文が出来る男の子がいました。それが冒頭に述べた彼、Iくんです。どうやら彼、とある会社の子息で、大変な思いをしているようではありました。しかし!全く勉強してる感じがしない!授業態度も良くない!な・・・なんなん・・・?少なくとも私の方が勉強してる感じでは・・・?本とか読んでるのでは・・・?


ここからなんと、高校2年で私が鬼のガリ勉を開始するまで、彼のことを現代文でもほかの科目でも、1度も抜いた記憶がありません。

しかも確か彼、高校からあの忌まわしい東進ハイスクールに通い始め、メキメキ成績が伸び、模試では学年の首位をウロウロしていました。


これが悔しくて悔しくて、私は高校2年生からは、毎日どんなにしんどくても床に就くまで必ず参考書の問題を解き、前の日の復習までやるという課題を課し、高校3年まで本当に毎日やり切ります。予備校は東進ハイスクールより学費の安い城南予備校(いいとこですよ)。なおかつ、人となるべく接する時間を減らし、学校の中休みも2分で移動し8分勉強、昼休みも5分で食べて残りは勉強。人と話すと「あっ話した、時間もったいな」という認識でその時間を測ったりしてました。勉強量のノルマを達成しなければ寝れないとかトイレに行けないという日々。毎日の勉強時間、内容を克明にノートにつけて、こなした問題量を時間で割って毎日勉強の質も測っていました。


ここまでやって、高二の夏の模試で初めてIくんを抜かし、クラス1位になりました。文系特進クラス1ということは、もちろん学年一位だったので、すごく嬉しかったのをよく覚えています。しかも確か彼の得意なもうひとつの科目、日本史でも勝ってたような気が・・・

ライバル心を燃やしに燃やし、勝手に目の敵にしていたので、彼に勝てたか勝てないかは、毎回の模試の大きな指標でもありました。試験終了5分前に彼の顔がチラつくみたいなこともありました。うーん、負けず嫌い。


センター試験では現古漢あわせて2個くらいしか間違えなかったから国語だけ勝ってたけど、総合では彼にもクラスの他の子にもガン負けしてたと思います。くっ・・・化け物みたいに優秀なクラスでしたね・・・


なんだかんだ、彼はかなり優秀だったので、早慶受けた学部全部受かって、(しかも確か外大も受かってた)ずっと行きたいと言っていた私と同じ大学の看板学部へ。いやそこは外大行けよと思ってしまったけど。彼は私の学部にももちろん華麗に合格し、蹴りあげていて、そのおこぼれにあずかったのか、私は補欠でやっと今の学部に受かったんです。ずっと行きたかった早稲田に落ちまくり、悲しみを引きずりました。しかもその前に上智も落ちて死ぬのかなと思いました。大凶


そんな話はさておき、大学に入ってから私が放送研究会で様々な怖い思いをしている傍ら、彼は素敵なスクールライフを送っていたようで、留学に行ったり旅行したりして忙しく、すんごい綺麗な彼女が出来て、多言語話者になり、最強って感じになっていました。

SNSでその様子を把握していた私は内心めちゃくちゃ悔しがっていたのですが、その様子は出さないように「えっ彼女めちゃくちゃかわいい!」とか、「○○いいよね、私も行ってみたーい!」とか、普遍的な友人としてのリプライに精を出していました。馬鹿です。


しかし、今年夏休みになる前のある日、キャンパスでばったり彼に出くわしました。


すると彼から一言


I「○○(私の苗字)ってすごいよね!」



私「えーなんで笑*1




彼はこう続けました

「俺おまえのブログ読んだんだけど、やっぱすごいよ!めちゃくちゃ尊敬した!昔から綺麗な文章書くよね!」


んァ???????????????

何を言っているんだこいつは・・・????


なんと、今まで散々勝手に敵対視しては負けた負けたと思って羨ましがり悔しがっていた相手から、突然の賞賛。

これぞまさしく、青天の霹靂。


私は彼に

「い、いや・・・Iくんの方が凄いでしょ、留学とかしまくってて、てか何なら、Iくんのがいい文章書けるよ・・・うちより頭良かったんだし・・・」


それに対し彼の言葉は


「いやまじそんなことないって!日本語今やばいし!色々頑張ってるみたいですごいね!応援してる!」


やわらかく微笑んで追い打ちをかけられた。頑張・・・?応援・・・?あ、ありがとう・・・?でいいのか・・・?なんなんだこれは?想定してたやりとりと違うぞ・・・これはもうHP0だ・・・残機もない。は、早く1UPしたい・・・


そこから先、あまり記憶が無いけれど、なんとなく嬉しいような、なんとなく悲しいような、全く不思議な気持ちでありがとうと言って別れた、ような気がする、、。HPを完全に削り取られているくせに、なんだか嬉しいような心地よい気もして、帰り道はとぼとぼ歩く感情の福袋みたいな感じでした。家に着いて、ベッドにデーンと横たわり、私は少しだけ、笑いました。


なんとなく、人間って勝ち負けじゃないのかなと、7~8年越しにやっと思えた私でした。


ではまた。


amane

*1:はァ?えっ、ハァ?