どうということもない

どうということもないけど 忘れたくない

挿絵画家達の業は深い

 

漫画も好きですが、その系譜となったであろう1890〜1920年代の小説挿絵たちが本当に好きです。特に好きなのはビアズレーとニールセン。私は高校の頃にこの2人と出会ってしまい、完全に性癖を歪められました。どうしてくれるの、、?バルビエやらデュラックやら、日本なら竹久夢二とかいろいろあるんですが、今回はこの2人にフォーカスします。

 

オーブリー・ヴィンセント・ビアズリー(1872~1898)は、イギリスのイラストレーター、詩人、小説家。ヴィクトリア朝の世紀末美術を代表する存在。悪魔的な鋭さを持つ白黒のペン画で鬼才とうたわれたが、病弱ゆえに25歳で死去した。

(wikiより)

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そう。悪魔。彼の描く世界は魔の潜みし幻影。

オーブリービアズレーとオスカーワイルドは切っても切り離せないので、私はいつもサロメの話をする時ビアズレーの話をしてしまいます。まあそこに潜む2人の関係性とかそういうコンテクストも嫌いじゃないんですけど、やっぱり絵が単純に優勝してしまっていますよね。

 

本当に大好きなんですよ、ビアズレーのイラストレーション。高校で出会ってからずっと心酔しています。暗闇に煌々と光る艶かしさ。

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すごくたくさんの男性器や女性器のモチーフが出てくるんですが、それを探すのも楽しい。隠れミッキーみたいな感じです。隠れ…いや、ちょっと黙っとこうかな。このブログ、下ネタとかやってないんで。とにかくそれだけじゃなく、画面がかなりシンプルなのに対しとんでもない数のメタファーに満ち溢れてて、その計算性もビアズレーらしくて良いですよね。頭が良すぎるというか、今見ても新鮮さがあるのは恐ろしい。これを見て震撼した漫画家が日本にもたくさんいるわけですから。山岸涼子なんて特に色濃いですよね。彼女もシンプルな線でおどろおどろしくも美しい世界を如実に示す。妖精王が本当にオーブリービアズレーの構図まんまのところとかありますよ。あのほら井氷鹿(いひか)の振り向くシーンとか。(山岸オタならわかるよ)。パタリロ魔夜峰央なんかもビアズレーに影響を受けたと言います。バンコランとマライヒなんてまんま。ビアズレー作品そのまんまです。フェティッシュなその関係性といい、うーん、罪深いな、、、何人の女を道連れにしたのだろうか。てかビアズレーのせいで腐女子とか夢女子になった奴絶対1900当時もいたでしょ。私わかるからな、女の性分ってずっと変わってないの。だってシェイクスピア全盛の初期近代ですら美少年マニアの女性が美少年演劇に全通してログ書いてた証拠残ってるくらいなんだから。ジャニーズJr.の世界じゃんそんなん!ッハァ…ッハァー?

 

言うてますけども。

冷静になろう。

嗚呼ビアズレーの描くその世界に一度ですらいけたことがあるだろうか。否、無いのである。

世界観に入りたいかと言われると、微妙だろうか?幸福とはまた違った諧謔的な世界がそこにある。

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この毛の生えたテーブルの支柱とかグロすぎる。好きですけど。

 

サロメになろうと思えば思うほど私はサロメとは正反対の女に近づいてしまった気がする。高校生くらいまではビアズレーのイラストレーションのように銀の皿に乗ったヨカナーンの血塗れの頭に口付けしたい、とそう思っていたのですが、最近はカイニールセンの世界でボブカットの美しく細い庭師とダンスを踊るのも快いかなと思っています。なんか首とか切ったら断面ゴリゴリしてそうでやだし。いくら好きな人でも断面見るのはキツくない?だからなんかあのほら、エッチな漫画とかでよくあるあの断面見せるやつとか、個人的には好きじゃないんですよね。見えたところで何なんだ?それは空想じゃん実際に見たか?本気で輪切りにしてみた?ってなっちゃう、あれ、なんの話だ?

 

話を戻しまーーーーす!

打って変わって、カイニールセンの話をしましょう。全く毛色が変わりますよ、本当にいい絵を描くんです。美しくて可愛らしくて、おとぎ話の世界。出てくる人間みんな綺麗。背景も綺麗。でもたまに、怖い。

 

カイ・ニールセン(1886-1957)は、コペンハーゲン出身。デンマークイラストレーター。絢爛豪華なイラストと彩色を特徴としており、19世紀後半から1930年頃のイギリスを中心とした挿絵の黄金期である「挿絵の黄金時代」に活躍した1人。

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なんかこれ、、、ディズニーっぽいですよね?ディズニーっぽくない?そう、彼は実は、ディズニーなんです。

 

実はこの方、本業の挿絵が下火になり渡米され、アメリカでディズニー社の依頼を受けてファンタジアなどの作品に参戦されていました。人魚姫をやろうと言う計画もあり、彼は1941年にコンセプトアートを描いたのですが、没に。なんやかんやがありました。

白雪姫の美術担当だったグスタフテングレンなど、北欧出身の挿絵画家はディズニー作品黎明期と関連が強い。女の子の憧れの世界に最も近い人々でした。

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この王子様然とした人間、実は庭師なんですよ?やばくない?12人の踊るお姫様っていう童話の中のワンシーンです。美しいなぁ。薔薇とか摘んでほしいよね?しかも終盤は彼自身が選んだ1人のお姫様と踊ります。お姫様のドレスも可愛すぎる。こんなにたっぷりとしたドレープにここまで大胆に柄を入れて、しかも少し和服っぽい!

お話の流れは説明する体力がないので検索してね!

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いやーんかっこいい。かわいいし。最高。この豪華絢爛な背景の宝飾とか、大胆なヘッドドレスの構成とかよく思い浮かぶなと思いませんか?背景の仄暗さは夜明け前の闇を、前景になるにつれてどんどん色が明るくなっていくのに、庭師のマイケルだけ真っ黒。襟元にはフリル。細い足に履かせてある黒い靴までのラインの美しさと言ったらありません。私金髪ボブの細い美しい男の人とかもう神だと思う、、神の産みし存在?風と木の詩ギムナジウム万歳、、トーマの心臓でも見たし、、何よりもリオフォーティアくんか、、、

おそらく我々の大好きな金髪美青年という概念もこのカイニールセン無くしてはここまで盛り上がらなかったと思うんですよね、、、いやはや

 

ビアズレーがおどろおどろしく艶かしい世界観だとすれば、ニールセンはきらびやかだけどどこか寂しく、厳しい面もあるという童話挿絵ならではの世界観でしょう。ということでみなさんぜひ検索してみてくださいねー!

 

ではまた

 

amane