どうということもない

どうということもないけど 忘れたくない

ビードロの記憶たち

瞬間的に感じる


「もう一生この人達と、こんなことはしないだろうなぁ」


そういう時の感情は、いつでも出して手にとって四方八方から眺められるように、ビードロの中に入れておいて、リボンを巻いておくのだ。頭の中の引き出しに小分けにしたものが、たくさん入っている。いろんな色をしているので見ていて飽きない。透き通った水色に黄色が入っているのもあれば、なんだかばっちい色合いのものもある。うーん、なんだこれは?へんな色の液体が入ってる…?まぁいっか。


ミスIDを受け始めたエントリーシートから一貫して言っていますが、人生は、一度しかないんです。人間に生まれるってすごいことです。この世界の何になれるかなんて、私たちは選べない。一読者であるあなたとわたしも、同じ星に、人という生き物に生まれた。こりゃあ、とんでもないミラクルロマンスなわけです。うむ。そもそもこんな天文学的確率のもとに生まれた我々。それが、友達の友達だとか、酔っ払ってノリで仲良くなったとか、SNSのメッセージを交わす、だとかひょんなことがきっかけで出会う。どんどん仲良くなっていく。更には、これからさらに飲もうか、映画でも見ちゃおうか、カラオケにでも行っちゃおうか。だなんて。数じゃはかりしれないくらい末恐ろしい確率の上に起こる出来事なのです。


そんな時私は、あーこのひととき、全て大事にしないとな、忘れたくないな、と思います。

まだまだ若くて未熟で、愚図な私ですが、それでも大事な記憶がたくさんあります。もう二度と実現しなさそう、だけど、ひょっとしたらまたあるかもしれない。「場面で行動」なんて、その辺の大学生たちはよく言ったものだけれど。たしかに映画ならば、あのひとときはワンシーンにも満たない。あなたと私との共演は、カメオ出演の域を出ないけれど、それでも忘れないでいてくれれば嬉しい、と今日もずらりと並んだ遥か遠くまで続く記憶の引き出しを見ながら。


しかし、かなしいかな、人間は忘れてしまう生き物なので。わたしがどこにしまったかわからなくなったときは、ビードロの色を教えてください。あの時、周りにはなにがありましたか。あなたはどんな色の服を着ていましたか。わたしの表情はどんなでしたか。

そしてまたもう一枚、薄くビードロを重ねて、新しい色をつけてもいいですか?


ではまた


amane